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2010-04-0710年品質のユーザインタフェース−その5

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JR東海新幹線予約サイトのUI設計プロセス-5


「使い込める実用性、機能性の提供」というコンセプトから、ユーザのサイクリックな利用の情報を活用する「いつもの列車を予約」メニューが導かれました。

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1.ユーザオリエンテッド要求仕様:いつも利用する列車を登録しておける、という機能は、UIコンセプトと言うよりはUI機能のコンセプトと言うべきかもしれません。すなわち、既に見ました「ステップナビゲーション」のような表示や操作の仕組みだけでなく、もっと上流のデータベースの構造にまで及ぶ機能提案だからです。会員毎のデータベースを持ち、ユーザ毎に自由に列車を登録しておいてそこから選択して予約できることは、繰り返し利用の多いビジネスユーザには有り難い機能です。


元々このコンセプトは弊社のユーザインタフェース指標フレームの中の「ユティリティ/使用性の拡張-個人への最適化」から生まれてきています。勿論ユーザニーズのブレーンストーミングからも得られるのですが、ユーザインタフェース視点から機能仕様を提案していくことは、UI設計を専門とする我々の役割でもあると考えているからです。そしてここで大事なことは、世の中にカスタマイズメニュー機能が既に存在しているから提案するのではなく、「自分に最適なものへ」という要求はユーザニーズとしてベーシックなものである、という確固たる知識から提案するのだ、と言う姿勢を、ユーザインタフェース設計者は持ち続けていることです。そうした設計者のプリンシプルによって、要求仕様設計とか要求開発といった構想設計をユーザインタフェース設計者が担え、結果的にそれがユーザオリエンテッドなものづくりにつながると考えます。


今でこそユーザカスタマイズ的な視点はユーザの囲い込み機能として当たり前のようになってきていますが、Webでのアプリケーションサービスが始まった頃としては、システム開発の現場にとってはリスクがある機能だったと思います。と言いますのは、これ以外にもダイレクトに空き席を見せて座席指定を実現したい(このサービスは当初は提案止まりでしたが現在実現されています)、とか見慣れた時刻表から指定したい、といったユーザ視点に立ったユーザインタフェースコンセプトを提案したところ、施主側のJR東海お客様係担当チームの皆様は大変喜んでおられました。インターネット予約としては後発となったが、こうしたユーザに喜んでもらえる仕様は是非実現したい、と言う方向性が、合同検討会で決定されていきました。


このように、ユーザインタフェースは、ユーザを代表する立場としてユーザインタフェース設計の専門家が要求仕様をまとめていくのが、良いユーザインタフェースを開発するためには重要なことだと考えます。もちろんシステム設計のエンジニアリング面を無視したようなユーザインタフェース要求を書いては、システムのリスク面から捉えても得策ではありませんし、最終的に施主にとっても嬉しい要求仕様とはなりません。あくまでも十分なシステム開発技術のノウハウを知った上で、ユーザを代表したユーザインタフェース要求仕様を書くと言うことです。良い建築を立てるためには、よい建築家が施主と施工業者の間に立って、建築というプロジェクトマネージメントを進める必要がある、と言うコンストラクション・マネージメントの仕組みが、米国では主流だそうで、同じようにシステム開発においても、施主とシステムインテグレータの間に立って、施主(ユーザ)とシステムインテグレータの両方の意見を吸い上げて最適なユーザインタフェース設計を行う、という、自立したユーザインタフェース設計ができる組織や人材があることが望ましいわけです。


建築の業界ははるかローマ時代にまで遡る歴史があり、そんな中から最適な分業システムが完成度高く作られてきています。ほぼこの建築業界システムを学ぶ形でシステム開発の世界も、プロジェクトマネージメントシステムを作ってきました。が、まだまだシステム開発の業界は歴史が浅く、建築業界のような設計と施工のバランスの良いシステムはできていません。特に建築業界での建築家に該当するユーザインタフェース設計家がいないというのが問題で、歴史は浅いのですがそろそろきちんとしたユーザインタフェース設計家を育てていく必要があると思います。そしてユーザインタフェース設計家に必要な素養はというと、まず先進的なシステム技術に明るいことと、このブログで紹介している概念設計ができるかどうか、だと考えております。


2.ユーザインタフェース技術:上記のユーザオリエンテッド要求仕様は、ユーザの立場を代表する要求を利用状況や機能の要望を調査する事によって導かれます。その時に必要なユーザインタフェース設計のシステムオリエンテッドな側面、例えば一瞥でも重要な気づきに役立つヴィジュアルエフェクトインディケーションを採用するとか、インクリメンタル技術を使ってユーザの操作ナビゲーションを提供する、と言った先進的でユーザに利益する技術を積極的に要求仕様に取り込む、ということです。もちろん闇雲に面白いからやってみようというのでは、結果的にユーザビリティの低いものになってしまいますので、全体のコンセプトにとって重要な役割があるかどうかの見極めは大事です。


JR東海新幹線予約サイトでも、当時としては技術サイドもあまり積極的ではなかった先進技術を我々ユーザインタフェース設計サイドから提案しました。今ではごく当たり前のJavaScriptです。複数の列車リストから選ぶところで、リストを何度でも選び直せるようにJavaの仕組みを取り入れたのです。当時HTMLで実装される技術では、通常一回オブジェクトをクリックすると、サーバへの問い合わせのセッションが始まって画面が切り替わりますが、列車候補のリストを選ぶ度に画面が切り替わるのは、ユーザにとっては嬉しくないのでJavaによるリスト選択の構造を提案したわけです。もちろんその動作がどのような体験かを施主にも分かってもらうために、Javaで作ったデモを持って行きました。簡単なプロトタイプやデモ画面は、そのユーザインタフェースを採用するメリット手早く伝えることができます。

このように、ユーザにとって利益するユーザインタフェースを設計するためには、時代の先端をいく技術についても明るくなければなりませんし、体験的にそうした技術による恩恵はどのようなものなのかを確認していなければなりません。もちろん同時にシステム設計や開発導入におけるリスクも学んでおく必要があります。