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2007-06-24間掛かり物語その3

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「間取り」という誂えーつづき

 まずはこの間取り図をご覧ください。前回お見せしたものの元になった通称「小さな家」の間取り図です。ご存知の方も多いかと思いますが、設計者は近代建築の巨匠ル・コルビュジエ。彼がまだ若い頃愛するお母さんのために精を尽くして拵えました。悪しき意図を持ってその構成要素を並べ替えたものとの違いはどこにあるでしょうか。


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 使い勝手を感じ取れるように入口から辿っていきましょう。玄関ドアを開けると小さなホールがあり、右手はキッチン、左手はリビングにつながっています。リビングへ移ってみると、奥に来客用の寝室がありますがここは「やれやれ、ちょっと着替えるか」と右へ回り込んで一息つきます。奥まった所にある洗面でかんたんに手を洗ってから、その先の今で言うウォークインクロゼットに服をかたづけるか、あるいは汚れ物をユーティリティの洗濯機に放り込むかします。気づけばキッチンはすぐそこ。帰宅後の用事を済ませているうちに一周回っていたのです。

 住宅建築ではこのような体験を「回遊する」と言ってとても大切にします。そのためには住まう人の暮らしをしっかりと見据えた動線計画が欠かせません。年老いつつあるお母さんの日々の営みを、ル・コルビュジエは過不足なく汲み取り思いやってこの「小さな家」の間取りを拵え誂えました。

 ひるがえって悪しき再構成図のほうにはそのような思いやりはありません。玄関ドアから一本中廊下を設けて必要な部屋をその両側に配置しただけ。特に問題なく使えそうではありますが、住まうその人の姿は何も映し出さずのっぺりとしています。そしてそれはホームページがあってそこからどこへでも等価に行って戻れるWEBサイトの間取りに似ています。

 WEBサイトは個人住宅ではなく商店街だよ、という意見も一理あるでしょう。それでもそれらを日々見て回るユーザのアクチュアルな情報利用を思いやった、個々の導線を拵え誂えるインタフェイスデザインは可能ではないでしょうか。

2007-06-03間掛かり物語その2

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「間取り」という誂え


 「今回はちょっと遊び心を起こして住宅の間取り図を描いてみました。ところでこの「間取り」という言葉、インタフェイスの世界では使われませんが、住宅設計ではとてもよく見聞きします。ひととものをつなぐ大切な間掛かり語として注目してみましょう。

 この図をご覧になってのご感想はきっと「なんとも稚拙な間取りだなあ」というものではないでしょうか。玄関ホールがそのまま廊下に続いていて、そこに左右に各部屋がただ並べられているだけ。家族が暮らす家なのにまるで学生下宿屋のようで、豊かな営みが生まれてくるように見えませんね。

 間取りという言葉には設(しつら)えの意味もありますが、「そのひと」に向けた誂(あつら)える指向より強く感じます。この間取り図からはおよそ何の誂えも感じ取れないと思います。

 実はこの間取り図はある名高いとても居心地のよい住宅の各部屋をそのまま並べ替えたものです。要素的にはまったく過不足はないものの、間取りにこめられた誂えを無くした極端な例にしてあります。いや、さらに悪意をこめて配置し直した、と言ってもいいかもしれません。なぜならこの配置はよくあるWEBホームページに倣ったものなのです。

 そういえばなんとなく似ているなあ、と感じられるでしょうか。次回はもとになったさる名高い住宅の間取り図をお見せして、インタフェイスが抱える問題について考えてみます。

2007-04-30間掛かりの日本語ーその1

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 二つのものの接面に発することを、実体がある存在としてとらえてそれを「間掛かり」と呼んでみます。「間掛かり」は間にあって二つのものをつなぎあわせ共にはたらかせるもの。物理的にそこになくても人の心にしっかり感じられるなら、それも実体がある「間掛かり」です。まずは日本語から「間掛かり」に関わる言葉を探してみます。

はじめに動詞にはどのような言葉があるでしょうか。


拵(こしら)えるー(よる/すわる/すえる/さしはさむ)製作する/こしらえる

設(しつら)えるー(もうける/そなえつける/たてる/)設備する/飾り付ける

誂(あつら)えるー(いどむ/いざなう/さそう/たわむれる)注文して作らせる

あしらえるー応対する/装飾する/取り合わせ、配合

 「拵える」は例えば刀を拵える、などのように用い、ひとに合わせて道具などを使えるように整えることです。また、「設える」はひととものこと、すべてを包んだ全体を快く最適な造りにすること。そして「誂える」はもっとそのひとに寄り添ったところで、身体や好みに合う調律を行うということでしょう。さらに「あしらえる」ことで最終的な体裁や装いを施します。

  「拵える」のひとは不特定の普遍的なひと、であるのに対し、 「誂える」のひとはある特性を持ったそのひと、を意識しているように感じます。

 インタフェイスデザインはこれまで「拵える」ことに熱心に取り組んできた一方で、どうも「誂える」ことは関心外であったのではないでしょうか。

 「住宅巡礼」などを書かれた建築家の中村好文さんによると、住宅作りには建築的な視点と生活的な視点のふたつがあり、前者は設計者の、後者は住み手の視点であるとのこと。住み手に「誂える」ということでぴったりつながるような気がします。

 ユニバーサルデザインはつまるところインディビデュアルデザインに行き着く、という議論もあります。日本の間掛かりことばの懐の深さ(それにいい意味の曖昧さ)をうまく使っていきたいものです。