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2011-02-25ICTの歴史とUIコンセプトの歴史(その8)

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オフィスアプライアンスツールの誕生とUIの歴史俯瞰

コンピュータの最新技術をオフィスワークに最適化して誕生したオフィスアプライアンス③Starワークステーションも、残念なことに広くオフィスに普及することなく消えていきました。その理由はオフィス用としては高価だったことが大きかったと思いますが、80年代後半から90年代に展開されていったオフィスを中心としたコンピュータとOA機器の進化を俯瞰すると、様々な関係性として見えてきます。


まず①パソコンの進化としてIBM-PCのアーキテクチャーが解放されPC/AT互換機として世界中のコンピュータメーカーがハードとアプリケーションで参画できるようになり、低価格のパソコンが提供されるようになっていきました。さらにOSはマイクロソフトが提供するMS-DOSがデファクトとなり、コンピュータと言えばPC/AT互換機を指すようになっていったこと、そしてさらに、MS-DOSはMS Windowsへと進化していったことで、コンピュータ市場でのデファクトが決定的となりました。


実はそのWindowsがデファクトの位置を占める事になった背景として付け加えておかなければならないことが2つあります。1つはオフィスアプライアンスとして生まれたGUIがStarからMacintoshへと受け継がれ、90年代の初頭までは絶大なファンの元でユーザインタフェースのバージョンアップを重ねていく事が出来たことでGUIの洗練がすすみ、そのMacOSを真似ることで稚拙なGUIだったWindows3.1から一気にWindows95へ進化でき、同時にアプライアンスの条件でもあった完成度の高いツールアプリケーション=Office95をプリインストールできたこと。そしてもう一つは、PCの入出力ペリフェラル(周辺)として必要なOA機器類が④MFPとしてデファクト化されていたことで、OAでは取り残されていた個人毎の文書作成を推進するために一気にPCを導入し配ることができたことです。

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2011-02-22ICTの歴史とUIコンセプトの歴史(その7)

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オフィスアプライアンスツールの誕生とUIの歴史俯瞰

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年表に添った製品の歴史を俯瞰していくことで物事の変遷を理解することは可能です。しかしその製品がなぜ生まれたのか、どのようにして生まれてきたのかを理解するのは、流れを見るだけでは分かりません。そこで流れの節目節目で区切って、歴史の断面を見ることが、物事の因果関係を理解するために大事となります。


オフィスアプライアンス誕生の頃の歴史をマップで俯瞰してみましょう。

1980年前後に①汎用コンピュータ(マップ右下)の小型化が進められ一気に②パソコン時代が開かれました。オフィス用としてデスクトップに置いて使えるサイズに小型化されたのです。また操作性においてもオフィスワークを想定したOSを搭載するようになって、従来の汎用コンピュータと比べると格段の使い勝手を提供するようになっていきました。マップ上では右下=汎用×高度なコンピュータを左上方向へと移動したと説明できます。ただ移動した位置は、左上象限に登場したワードプロセッサや③Starワークステーション、Macintoshなどと比べると小さなもので、③StarワークステーションのデスクトップメタファをコンセプトとしたGUIは、パソコンとは比較にならない圧倒的なアプライアンスを実現していました。


そして大事なことは、汎用コンピュータを小型化(機能を引き算)してパソコンが生まれた時と同じ時期に、同じコンピュータ技術を活用したGUIを搭載したオフィスアプライアンスが誕生した、ということです。技術の進化としてはほぼ同じレベルにもかかわらず、何故そのような画期的なGUIが実現したかというとXEROXパロアルト研究所はコンピュータメーカーではなくオフィス機器メーカーだったから、オフィスでの利用に最適化したコンセプトが生まれた、と言うことが出来ると思います。

五十嵐@インターソフト五十嵐@インターソフト2011/03/02 19:56新人に工業製品としてのインタフェースデザインを教えたいのですが、このあたりの話をしたほうがいいと思っています。教えたいと思っている割に「その先にナニを伝えたいのか」がはっきりしておらずもやもやしている次第です。この記事の内容を理解してもらえればいいのですが、いかんせん新人なので「読んで理解するように。」とだけはいえないのです。この記事を理解するということはどういうことなのでしょうか?インターフェースデザインやユーザーリサーチにどのように活用されていくのか教えてください。

OVALPLANOVALPLAN2011/03/02 22:26ここで書いているのはあくまでも自分自身や尾上さん、そして同じ頃にユーザインタフェースに関わりを持った人にしか伝わらないような、端折った物語です。ですので、UIの新人に伝えるには相当多くのその当時の知識や情報を追加する必要があります。それらを全て含めた物語を書いていく力は私にはありません。出来るとしたら、私なりに、そして尾上さんなりのブレークダウンした情報を添えて講義をしていくことは出来ると思います。独断と偏見だらけの語りになると思いますが、歴史は常に誰かの目線で描かれるものだと思って、そして尾上さんや私が考えるユーザインタフェースの歴史は、当時の主流であったOA視点だという自負も持ちながら、尾上&小林UIゼミナールとして活動していきたいと思っています。
それはそれとして、学校とは異なり社会で「学ぶ」と言うことは、常に始まりからのストリームとは限らず、途中のどこかから入って遡って行くことが多いもの。だということを前提に、このブログに書かれている用語をWikipediaなどで学びながら徐々に文脈を理解できるようになる、と言うことも大事ではないかと思います。
さらに、こうした歴史俯瞰がUIデザインやリサーチにどのように結ばれるのか、という五十嵐さん(だけではない多くのUI関係者)への疑問に応えていきたい(願望であって実現されるかどうかは約束できない)という思いで、たどたどしい足取りではありますが書き進めていきたいと思っております。
ともあれ、こうしたコメントを頂けることは励みになりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

2011-02-10ICTの歴史とUIコンセプトの歴史(その6)

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アプライアンスとは?

アプライアンスは一般的には「家電製品や電気器具」という意味で使われる場合が多いようですが、尾上さんがおられたリコーでは「アプライアンス・Appliance」は登録商標になっていて「作業のしやすさ」「管理のしやすさ」「情報活用のしやすさ」を目指したリコーのお客様への価値提供の考え方、と位置づけられています。高度な技術を誰にでも簡単に使える機能に仕上げる、といったニュアンスで使っておられて「アプライアンス・カンパニー」を企業ポリシーとして謳われているのです。日立製作所の家電部門が日立アプライアンスと社名にしているのは、ごく一般的な家電を意味してのアプライアンスです。オフィス機器のリコーがアプライアンスという言葉をわざわざ商標として使うのは、ややもすると専門的で難しく大げさになりかねないオフィスの機械を、簡単・便利に扱いやすい道具にするための縁の下の力持ちのような技術力を押し出すため、と捉えてよいでしょう。


すなわちここで「アプライアンスとは?」を問いかける理由は、リコーがお客様への価値提供とした「使いやすさ」とはそもどのようなことなのか、を哲学しておきたいと思うからであります。「使いやすさ」は簡単な言葉だが含まれている意味は複雑です。例えば「使いやすいね!」と賞賛して言うとき、その使いやすさは誰にとってもと言う標準的価値が含まれ、また日用品が持っている手軽で便利にも近いニュアンスも、またさらに実用性が高いという評価も含まれ、用途的にも幅の広さを感じさせる、と言った具合に多くの特長を備えている事を指しています。以上のような沢山の「使いやすい!」の意味を持った「アプライアンス」を、ここまで見てきたコンピュータの世界とOA機器の世界で捉えなおしてみたいと思います。


コンピュータはそもそも計算機ですから、計算するところならどんなところでも使える汎用性が大事な機能でした。特に当時はまだパソコンといえども高価でしたから、オフィスに導入する際にいろんな使い方ができる方が喜ばれました。よって、汎用性を重視したコンピュータ設計の基本構造になっていましたが、その一方でその汎用性を使いこなすための技術とその学習が要求されました。対比的にワードプロセッサとの違いを見てみると、CPUによる演算処理から表示部、キーボード入力などコンピュータとほぼ構造は同じですが、コンピュータはアプリケーションソフト次第でどんな用途にでも展開可能で、一方ワードプロセッサは文書作成しかできないが文書作成はの目的には「使いやすさ」を実現している、という違いがありました。


ユーザサイドから捉えると、ワードプロセッサは文書作成に最適化されていますので完成度の高い文書を初心者でも容易に作ることができます。その意味でワードプロセッサはコンピュータ処理を活用した「使いやすい文書作成」を実現したアプライアンス製品です。コンピュータの技術を文書作成ツールとしていち早く取り込んだアプライアンス機器がワードプロセッサだったのです。このようにアプライアンス機器として生まれたワードプロセッサですが、その後普及していくパソコンのアプリケーション機能としてジャスト社の一太郎のようなソフトウェア製品に姿を変え、ハードウェアと一体化された製品としてはやがて消えてしまいました。


ワードプロセッサと同じく当時の先端技術であるコンピュータ技術をオフィスワーカーにとって使いやすいアプライアンスツールとして構築したのが、Starワークステーションであり、その後継者であるMacintoshでした。StarやMcIntoshとIBM-PCが似て非なるものであるところが、ここにあります。すなわち、IBM-PCはプログラム次第で何にでも利用できる汎用性が売り物でしたので、コンピュータとしては原理的な仕組みだけが搭載されていて、利用するためにはその利用目的に沿ったアプリケーションソフトを設計するか、ひな形的なアプリケーションソフトを目的に合わせてカスタマイズする、といった使い方が基本だったのに対して、StarやMacintoshは最初からオフィスワークに最適化した環境(デスクトップ)と代表的アプリケーションをプリインストールされ、買ったその日から誰もがその機能を使って仕事ができる仕組みが提供されたのです。すなわち、コンピュータの機能を一般的なオフィスワークに適したツールとして使いやすくアプライアンス機器化したのが、StarでありMacintoshだったのです。ですから、ハードウェア的にはほとんど同じ仕様だったのですが、機器としての存在は全く違うものだったのです。そしてその存在の違いを決定的にしたのがGUI(グラフィカルユーザインタフェース)だったのです。GUIはその後Windowsにも搭載されて一般化していったのでコンピュータの進化における一側面として捉えられていますが、実はその誕生の時は一般的なオフィスワークに焦点を当てたアプライアンスツールとして設計されたのだと言うことを強調しておきたいと思います。


オフィスのアプライアンスツールとしてのMacintoshを振り返るときもう一つ注目しておきたいのが、プリインストールされたアプリケーションソフトについてです。Macintoshの本体には最初から文書作成MacWrite、図を描くためのMacDraw、絵を描くためのMacPaint、さらに1987年にはビルアトキンス開発のHyperCardといったオフィスワーカーなら誰もが使うであろうツール類がプリインストールされ、買ったその日から本格的なオフィスツールとして直ぐに役立つ仕組みを持っていたのです。そしてこれらのツールをシームレスに使いこなせる仕組がGUIに備えられていた。逆に言うとオフィスで誰もが行う共通ワークを実行できるアプリケーションとそのオフィスワークに最適化された環境(デスクトップ)がハードウェアと一体に組み立てられていた。このことをMacintoshはオフィスにおけるアプライアンスツールだった、と称しているのです。

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その後のコンピュータ業界全体の成長はMacintoshにも恩恵を与え、1980年代から1995年、すなわちWindows95が発売されるまでは、PC/AT互換機に負けないシェアーを確保していたのです。1990年前後のMacintoshの盛り上がりは相当なモノでした。毎年開催されていたマックEXPOは、ビジネスショーやモーターショーにも負けないほどの盛況ぶりで、私の住む京都の電気街寺町通りにもMacintosh専門店が数軒並んでいました。が、いかんせん世界中のコンピュータメーカー対アップル1社という多勢に無勢の業界勢力図には抗うすべもなく、90年代後半にはあわや倒産というところまで追い詰められるという衰退の一途を辿ったのは、当時のオフィスツールとしてPC/AT互換機、Windowsの汎用性に価値があったからです。すなわち「使いやすい!」のアプライアンスよりも「みんなと一緒!」デファクトスタンダードに軍配が上がったのです。


残念なことですが、このオフィスアプライアンスツール=プリインストールされた仕立ては、皮肉なことにMacintosh市場の成長と共に崩れ、上記アプリケーションのプリインストールもなくなり、PC/AT互換機に習ってMacintosh互換機発売(当時はユーザーの一人としてしめたと思いましたが)へとPC/Windowsとの対抗的姿勢がつよくなり、すなわちアプライアンスとしての魅力はなくなり、自滅の一途を辿ることとなったのです。


ところが神様はアップルのアプライアンスモノづくりの姿勢を見捨てなかった。そうです、iPhoneによってアプライアンスのものづくりが蘇ったのです。(つづく)

2011-02-06ICTの歴史とUIコンセプトの歴史(その5)

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ユーザインタフェースの始まりがXeroxのパロアルト研究所で開発されたワークステーションStarに搭載されたのが始まりであったことは、システム開発に関係する人なら誰もが知るところでしょう。ただStarは数年間しか販売されなかったのと、日本語搭載機(J-Star)が有ったとは言え実際にそのStarを操作したことがある人は、発表された当時でも数少なかったと思います。リコーではJ-Starを購入し技術的な調査が行われ、尾上さんはその時に実際にユーザインタフェースを操作し驚嘆したと言っておられました。


当時私はリコーの電子ファイルやワープロの企画とユーザインタフェース開発に参加する機会があったのですが、J-Starを見たことも振れたこともなかったので、尾上さんから話はきいてもMacintoshと同じだろう、程度にしか思っていませんでした。結局その後もJ-Starワークステーション(上谷編著-丸善株式会社)を読んだだけで、実物に出会う機会もなく現在に至っているのですが、当時の尾上さんの話を聞けば聞くほどせっかくリコーさんと仕事をしてたのだから見学をお願いすればよかったと後悔しています。


そんな訳で、具体的なGUIを多くの人が初体験したのは84年に発表されたAppleのMacintoshが始まりでした。私が始めてMacintoshに出会ったのは、当時私が所属していた京都デザインセンター(後のGK京都)のグループ企業であるGKテックでした。GKテックはコンピュータ技術を活用したシステム設計を受託をしていて、そこの岩政氏が米国からのお土産にMacintoshを持って帰ってきたとかで、彼の机の上にちょこんと置かれていました。岩政氏がにこにこしながら説明してくれて、おそるおそるマウスを触ったのを覚えています。本体と画面が一体になった縦長の箱に白い画面のクールな出で立ちで、簡単に持ち運べるように上部に(後から手が入るくぼみの)取っ手が付いていたのには驚きでした。四角や丸の図形をアイコンを選んでマウスを動かすだけでドローイングでき、まるで魔法の定規を使ってドローイングしているかのような感動を覚えたものです。そのスタイリッシュな出で立ちと画面上でのグラフィカルな操作作法は、当時のコンピュータ概念を完全に覆していて、専門家からはおもちゃ扱いされたのも納得できるほどの革新的デザインでした。要はいわゆるコンピュータではなかったのです。少なくともMacintoshと同じ1984年に発表されたIBMのPC/AT互換機がパソコンの主流となっていく、いわゆるコンピュータの流れとは一線を画したものだったのです。


何事も世界初というのはインパクトのあるものですが、得てして革新的なものほど時期尚早で消えていくものが多いものです。しかし、Starからは若干のアレンジがなされたものの基本的なユーザインタフェースを成立させるビットマップマトリックスのモニターとWindowとFolder、Icon、Cursor、そのCursorを操作するためのマウスとキーボードで構成されたグラフィカルユーザインタフェースがMacintoshに受け継がれ、世界中に熱狂的ファンを獲得していったことは、コンピュータとユーザインタフェースの歴史にとっては幸運そのものだったと思います。


ただここで注意していただきたいのですが、StarからMacintoshへと受け継がれたGUIがやがてWindowsへと引き継がれていった、と一般的には捉えられていますが、それは前出のコンピュータvsOA機器のコンピュータ側から捉えた歴史俯瞰であって、Starによって生み出されたGUIの歴史俯瞰は異なります。というのも(尾上さんのコメントにも書かれているように)Starで実現されたGUIは、OA機器すなわちオフィスツールとしてコンピュータ技術を取り込んだ結果生まれたもので、コンピュータを進化させようとして生まれたものではない、ということです。


コンピュータの進化形としてのGUIとオフィスツールとしてのGUI、どちらもGUIとしては同じと思われるでしょうが、コンピュータの進化形としてのWindows搭載PCとMacintoshとの違いは大きな違いがありました。一言で言うとアプライアンス性の有無です。GUIを語るとき、このアプライアンスの有無をヌキに語られることが多いのですが、それはものづくりにおけるコンセプトを無視した表面的な捉え方であって、樹を見て森を見ずなのであります。次回はそのアプライアンス性とはどんな事かについて見ていきたいと思います。